【統率者戦】7000円でちゃんと回る超安価構築を考える

概要

統率者戦はカードプールが非常に広く、金額的な妥協をしない場合はデッキの金額が平気で50万100万と高額になることも珍しくありません。一方で、カードプールが広いからこそ安くて非常に強力なカードも多く存在し、フォーマットを楽しむためにはそこまでお金をかける必要は必ずしもありません。そこで今回は統率者戦の入門者向けに7000円でちゃんと回るデッキを紹介します。単に安いだけでなく統率者戦の面白さがしっかり伝わる構築を目指してデッキを構築していきます。

統率者選び

固有色選び

統率者戦は100枚構築なので、7000円で組もうとすると1枚あたり平均70円とかいう無茶な価格設定になります。そのため、固有色は基本土地を多く採用できて色事故が起きづらい1色〜2色が良さそうです。そして単色EDHかつ安価となるとカードプールが狭まり、どうしてもデッキパワーが低くなってしまうため今回は2色の統率者を選びます。

  • 基本土地を多く採用できると平均の値段を下げられる
  • 単色&安価構築はデッキパワーに懸念

具体的な色を選んでいく上で気をつけたい点として、統率者デッキを安価で構築するとデッキの安定性やデッキパワーが低くなるため、勝ちきれない(コンボがうまく成立しない・対戦相手のライフを削り切るのに途方も無い時間がかかる)という事象がよく起きます。これを回避するために、下記2点を考慮します。

  1. 安価でも採用可能な強力なコンボが存在すること
  2. 安定感を持たせる安価なサーチカードが存在する色

つまるところです。緑は《異界の進化》のような安くて高性能なクリーチャーサーチが豊富に存在する色で、またクリーチャーによるコンボは緑だけでも様々存在するため、安価な構築でも安定感のあるムーブが期待できます。今回のデッキ構築の固有色は緑+1色として統率者を選びながらもう1色は決めていきます。

緑含み2色の統率者候補

統率者を選ぶ上では、フォーマットの魅力の一つでもあるプレイヤー間の相互作用を重視して、一芸に秀でた統率者よりはある程度行動の選択肢があり、インタラクティブなプレイを楽しめる統率者の方が、プレイを通じて様々な体験ができて良さそうです。

緑含みの2色統率者としては、過去にEDH.JPでは黒緑と緑白の統率者を調査した時の記事があります。緑青と緑赤はありませんが…。

この記事の内容に加えて緑青・赤緑の統率者も調査し、以下の4体が統率者候補となりました。

  • 《這い回る大群王、ザスク》(黒緑)
  • 《帰還した探検者、セルヴァラ》(緑白)
  • 《永遠の造り手、ラシュミ》(緑青)
  • 《首席議長ヴァニファール》(緑青)

この中から、低予算でもより完成度の高い構築が目指せる統率者を選んでいきます。

這い回る大群王、ザスク

《這い回る大群王、ザスク》は昆虫を強力にサポートする能力を持った統率者です。特に墓地から昆虫呪文を唱えられる能力は回数制限がなく、マナやサクリ台を用意すれば1ターンに何度でも唱えられる点が非常にユニークかつ強力です。メインギミックは《アシュノッドの供犠台》と《真鍮の虻》等の軽量な昆虫とのコンボで、主要なパーツが非常に安価で7000円でも金額制限なしの場合と全く同じギミックを組み込むことが可能です。安価構築でもクリーチャーのサーチは容易ですが、一方でアーティファクトであるサクリ台へのアクセスが比較的高価な黒系のサーチに頼ることになる点がネックになります。

黒緑という色自体も、安価でハイスペックな除去カードが豊富に存在する色で他のプレイヤーにも干渉しやすく、安価構築との相性は悪くなさそうです。

帰還した探検者、セルヴァラ

《帰還した探検者、セルヴァラ》はタップ能力により各プレイヤーの1ドローと、0〜4の緑マナを不確定で生む、ドローエンジンとマナ能力を兼ね備えたバランスの良い統率者です。マナを生む能力は統率者戦の平均的な土地の採用枚数は3割前後であるため、3マナ程度が期待値になります。メインギミックは《みなぎる活力》のようなクリーチャーをアンタップするカードで、統率者をアンタップすることでマナ加速&ドローを行い膨大なアドバンテージを獲得していきます。アンタップするカードは安いカードでも選択肢が多く、安価構築でも結構回るデッキを構築できそうです。

緑白という色自体、黒緑同様に除去に優れている他、《エラダムリーの呼び声》のような優秀で安いサーチカードも存在します。

永遠の造り手、ラシュミ

《永遠の造り手、ラシュミ》は各ターンに自分が呪文を唱えるたびにライブラリの一番上のカードを唱えたり手札に加えたりできる統率者で、多人数戦において各ターン誘発する能力は高いパフォーマンスを誇るため強力なドローエンジンとなります。この能力と相性の良いインスタントタイミングで唱えられる呪文を多く採用する都合上、クリーチャーへの依存度は低くなるため、クリーチャーサーチに強い緑の強みを生かせない懸念があります。本来緑青には《タッサの神託者》コンボが存在しますが、コンボパーツである《Thought Lash》や《パラダイム・シフト》が軒並み予算オーバーです。安価構築への適性はあまり高くなさそうです。

首席議長ヴァニファール

《首席議長ヴァニファール》は《出産の殻》のような、生贄にしたクリーチャー+1マナのクリーチャーをライブラリから戦場に出す強力な起動型能力を持つ統率者です。起動にマナコストを要求しないことを活かして、どんなマナ帯のクリーチャーをコストにした場合であっても《水跳ねの海馬》や《ハイラックス塔の斥候》などのようなクリーチャーをアンタップするカードを経由することで、最終的に6-7マナ帯の強力なクリーチャーにアクセスすることが可能です。ただし、メインギミックの一つである《船砕きの怪物》と軽量アーティファクトによる無限マナは重要パーツである《魔力の墓所》などの軽量マナアーティファクトが軒並み予算オーバーで採用できないため、コンボ成立が困難です。

デッキ紹介

上記の内容を踏まえて、今回は《這い回る大群王、ザスク》を統率者として採用しました。《帰還した探検者、セルヴァラ》もかなり強そうなので、今回の記事に需要がありそうなら追加で構築してみたいと思います。

デッキリスト

構築したデッキリストはこちらです。moxfield様でも公開しています。

https://www.moxfield.com/decks/FI-BAvXs6ES4-qZd4ExiUQ

— 統率者 1 —
《這い回る大群王、ザスク》

— クリーチャー 29 —
《死儀礼のシャーマン》
《ボリアルのドルイド》
《苛性イモムシ》
《深き闇のエルフ》
《エルフの神秘家》
《フィンドホーンのエルフ》
《ジョラーガの樹語り》
《ラノワールのエルフ》
《ザンティッドの大群》
《真鍮の虻》
《機械仕掛けのクワガタ》
《機能不全ダニ》
《呪詛の寄生虫》
《ドロスバッタ》
《自在自動機械》
《ウイルスの甲虫》
《ズーラポートの殺し屋》
《仮面の蛮人》
《ナントゥーコの追跡者》
《辺境地の罠外し》
《屍百足》
《迷える探求者、梓》
《墓所のうろつくもの》
《回路の修理屋》
《刻み角》
《むら気な長剣歯》
《ウルザの空戦艇、リベレーター号》
《跳ね回るシケイダ》
《針虫》

— ソーサリー 10 —
《ウルヴェンワルド横断》
《無名の墓》
《自然の知識》
《森の占術》
《生き埋め》
《耕作》
《木霊の手の内》
《闇の誓願》
《最後の別れ》
《選別の儀式》
— インスタント 13 —
《弱者選別》
《暗黒の儀式》
《納墓》
《秋の帳》
《輪作》
《自然の要求》
《突然の衰微》
《暗殺者の戦利品》
《名も無き転置》
《禁忌の調査》
《内にいる獣》
《化膿》
《呼応した呼集》

— エンチャント 7 —
《楽園の拡散》
《繁茂》
《陰湿な根》
《ケンリスの変身》
《想起の拠点》
《蟻走感》
《密室の温室の事件》

— アーティファクト 9 —
《太陽の指輪》
《秘儀の印鑑》
《友なる石》
《ゴルガリの印鑑》
《月銀の鍵》
《反発のタリスマン》
《アシュノッドの供犠台》
《太祖の象徴》
《類似の金床》

— プレインズウォーカー 1 —
《飢餓の潮流、グリスト》

— 土地 30 —
《ボジューカの沼》
《埋没した廃墟》
《陰謀団のピット》
《統率の塔》
《出現領域》
《寓話の小道》
《森》12
《沼》9
《幽霊街》
《マリポーサ軍事基地》
《群がりの庭》

デッキ概要

デッキの値段は7,342円(2024年3月15日現在)です。まさか極楽鳥(280円)が高くて入れられない日が来るとは思いませんでしたが、デッキのギミックをしっかり作り込みながら四捨五入して7,000円に収めることができました。デッキパワーレベルは6です。

今回のデッキは《這い回る大群王、ザスク》を軸とした昆虫を使った無限コンボを目指すミッドレンジ帯のコンボデッキです。《這い回る大群王、ザスク》の能力で《名も無き転置》や《機能不全ダニ》などの幅広く当たる除去を使い回して相手を妨害しながら、サクリ台+インスタントタイミングで唱えられる昆虫を揃えて無限コンボの成立を目指します。平均キルターンは5ターン程度です。

コンボ・ギミック紹介

這い回る大群王、ザスク+アシュノッドの供犠台+無色2マナ以下の昆虫+出現領域
  1. 統率者と《アシュノッドの供犠台》が場にある状態で《出現領域》を起動
  2. 《アシュノッドの供犠台》で《真鍮の虻》を生贄に2マナ、《這い回る大群王、ザスク》の切削能力が誘発
  3. 能力の解決前に《真鍮の虻》を墓地からキャスト、解決して切削2

上記の流れでループが可能になり、無色無限マナの成立とライブラリのカードをすべて墓地に送ることができます。その後は墓地に落ちた《ナントゥーコの追跡者》と《回路の修理屋》を使って墓地の任意のカードを手札に加えることができるため、《ズーラポートの殺し屋》などでフィニッシュします。要求枚数は多いものの、様々なカードで状況によって代用が効きます。

・《アシュノッドの供犠台》:《ドロスバッタ》+《墓所のうろつくもの》or 《類似の金床》

・《出現領域》:《ウルザの空戦艇、リベレーター号》、《跳ね回るシケイダ》、《針虫》+《墓所のうろつくもの》or 《類似の金床》or 《陰湿な根》

個別カード紹介

跳ね回るシケイダ

《跳ね回るシケイダ》はキーカードです。無限コンボに必要な瞬速を付与する能力を持ちながら昆虫であるため、《這い回る大群王、ザスク》の能力で墓地からも唱えることが可能です。また、自身も瞬速であるため、他に昆虫がいない状況下でも《アシュノッドの供犠台》と組み合わせれば大量の切削が可能です。

《跳ね回るシケイダ》をはじめ、インスタントタイミングでカードをプレイすることを許可するカードを多く採用しているため、《機能不全ダニ》や《呪詛の寄生虫》といった妨害能力を持つアーティファクトクリーチャーをインスタントタイミングでプレイすることで、相手の意表をついた妨害が可能になります。

名も無き転置

《名も無き転置》は多相を持つインスタントです。クリーチャータイプを持つため《這い回る大群王、ザスク》により墓地から唱えることができますが、死亡しないため《這い回る大群王、ザスク》によりライブラリボトム送りにならず、何度でも唱えることができます。2マナ払うごとに-3修正を与えることができるため、大型小型問わず大量のクリーチャーを継続的に除去できる強力なギミックです。《納墓》で落とす選択肢になります。

寓話の小道

《寓話の小道》はこのデッキ唯一のフェッチランドです。本来《這い回る大群王、ザスク》の《世界のるつぼ》能力はフェッチランドと極めて強力なシナジーを形成するのですが、《新緑の地下墓地》などの一般的なフェッチランドが全部高いので、このカードしか採用できませんでした。さすがに《進化する未開地》はカードパワーが辛すぎたので採用を見送っています。

群がりの庭

《群がりの庭》は昆虫、ネズミ、蜘蛛やリスがマイナー部族なのをいいことにタップするだけでクリーチャーを再生できるという妙に強力な能力を持った土地です。統率者やキーカードを破壊から守ることができます。

改良の方針

あと1000円でも予算を引き上げられれば採用したいカードは色々とありますが、中でも特に採用できなかったことが惜しまれるカードを何枚か上げます。

  • 《ファイレクシアの供犠台》:約1000円。強いサクリ台。
  • 《悪魔の意図》:約500円。強いサーチ。
  • 《ウルザの保育器》:約1000円。《類似の金床》よりもだいぶ使いやすい。
  • 《七曲がりの峡谷》:約1000円。大体《出現領域》。
  • 《露天鉱床》:約1000円。なんでも割れるデメリットなしの《幽霊街》。強い。
  • フェッチランド各種:2000円〜。あるだけ入れたい。

それ以外はmoxfieldの方で、consideringに入っているカードを参考にしていただければ。

まとめ

元々5000円で開始した企画だったんですが、どうしても収まりきらなかったので7000円に引き上げました。最近は他のカードゲームも結構高いですし、これくらいなら良いかと…。

今回の記事を通じて、統率者戦って安く組んでも結構楽しめそうなフォーマットだなと、感じていただけたら嬉しいです。

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